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7話 オーラの余波と早すぎる撤退

Auteur: みみっく
last update Date de publication: 2026-03-23 21:24:59

(あ……さっきの話の続き、ですか?)

 ピンクにハート柄の、あの「チラ見せ」の話だ。彼女の中ではまだ終わっていなかったらしい。

「……うん。頑張って」

(何を言ってるんだ俺は……。そんなことは頑張らなくていいよ……と思う反面、心のどこかでそれを楽しみにしている自分がいた)

 そんな俺の矛盾した返事を聞いて、サナは「よしっ」と小さく拳を握り、満足げに微笑んだ。そのニヤニヤとした表情を見る限り、次はどんな「自然な」演出を仕掛けてくるつもりなのか、想像するだけでこちらの顔が熱くなる。

「……終わったぞ! 結界石、これだけ採れた!」

 ちょうどその時、汗を拭いながらリーダーたちが戻ってきた。その手には、淡い光を放つ結界石がずっしりと抱えられている。

「大漁ですね。それじゃあ、暗くなる前に下山しましょうか」

 俺はサナの「次の作戦」を警戒しつつ、重い腰を上げた。

♢禁忌のオーラと震える仲間たち

「あまり採っても、重くて運べないしな」

「もう十分採れたわ。これだけあれば依頼のノルマなんて余裕で達成よ」

 男たちが重そうに袋を担ぎ、女性メンバーが満足げに額の汗を拭う。山頂での目的を果たした一行には、どこか安堵の空気が流れていた。

「途中で夜営もしないとだしな」

「昨日の夜営した場所まで急ぎましょう。日が暮れちゃいますよ」

 俺の提案に、リーダーも深く頷いた。

「そうだな。魔物の活性が上がる前に、早く戻ろう」

 下山を開始したが、正直なところ、もう道中の雑魚魔物と一戦交えるのすら面倒になっていた。一々足を止めるのも、サナとの時間を邪魔されるのも気が進まない。

(……少しだけ、威圧しておくか……魔物避けになるだろうし)

 俺は歩きながら、ほんの少しだけ『絶対的な支配者のオーラ』を解放した。戦う意思のある者を萎縮させ、近寄らせないための「魔除け」のつもりだった。

 だが、隣を歩いていたサナの顔色が、一瞬で紙のように真っ白になった。

「……そ、そら。いったい……な、何をしてるんだ?」

 彼女の声は小刻みに震えている。

「戦うのが面倒だから、回避しようと思ってオーラを出してみたんだけど?」

「お願い、消してくれ! ……それ、恐怖で体が動かなくなる……っ」

 サナが俺の腕に縋るようにして、その場に膝をついた。慌てて周囲を見渡すと、リーダーたちもその場に崩れ落ち、呼吸を忘れたようにガタガタと震えている。

(……これ、使えないスキルだな……)

 慌ててオーラを霧散させると、重苦しい空気が一気に晴れた。サナは荒い息をつきながら、涙目で俺を睨んでくる。

「……そら、今の、冗談抜きで死ぬかと思ったぞ」

「ごめん、加減したつもりだったんだけど……」

 リーダーたちは地面に手をついたまま、何が起きたのかすら理解できず、ただ本能的な恐怖の余韻に支配されていた。

 結局、余計な時間を食ってしまった。これなら普通にゴブリンを焼いていた方が、よほど効率的だったかもしれない。

♢オーラの余波と早すぎる撤退

「え、ごめん……。消したから。サナ、魔王のオーラをお願いね」

 俺が慌ててオーラを完全に封じ込めると、サナは深呼吸を一つして、ようやく顔色を戻した。彼女は俺の腕にギュッとしがみつくと、少しだけ潤んだ瞳でこちらを見上げてくる。

「ありがとう……。そら、強すぎ……だぞぅ♪ んふふ。やっぱり……そらは、すごいやつなんだなぁ……♪」

 最後はいつもの調子で甘えるように笑ったが、その体温はまだ微かに震えている。どうやら、手加減したつもりでも彼女たちにとっては「生存本能が警鐘を鳴らすレベル」の何かだったらしい。

「リーダー、大丈夫?」

 俺が座り込んでいる一行に声をかけると、リーダーは青白い顔のまま、震える膝を叩いて無理やり立ち上がった。

「なんだか、ドラゴンと対峙したような恐怖というか……ドラゴンに間近で睨まれているような感じがして動けなくなった……。まあ、ドラゴンと対峙なんかしたこと無いんだがな……」

「ああ、底知れない恐怖を感じたな……。まるで、死そのものが隣を通り過ぎたような……」

 男も冷や汗を拭いながら、おぼつかない足取りで立ち上がる。彼らにとって、今のオーラが俺から出たものだという確信はないようだが、この場所に「何か」がいたことだけは本能で理解したようだ。

「早くここから離れよう。……危険な気がする。ここに居ちゃいけない何かが目を覚ましたのかもしれない」

 リーダーが焦燥感を露わにして下山を急かす。本来なら俺が原因なのだが、これ以上説明するのもややこしいので、俺は大人しくその流れに乗ることにした。

「そうですね。夜営地まで一気に降りましょう」

 俺たちは逃げるように山頂を後にした。サナはと言えば、俺の腕を離さず、時折「自然に」裾を揺らす特訓を再開しようとしているのか、足元を気にしながらニヤニヤと笑っている。

(……魔王のオーラで中和してもらったけど、やっぱりあのスキルは封印だな)

 静まり返った山道を、俺たちは急ぎ足で降りていった。

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